墨子: 現代語訳版・解説つき

天下の利を興し、天下の害を除く。
儒家と天下を争った、もう一つの中国思想。
「兼愛」「非攻」で知られる墨子は、孔子の後、戦国時代へ向かう中国に現れた思想家である。
人々が互いを害し、国家が利益を求めて他国を攻める時代に、墨子は「その行いは、本当に天下を利するのか」と問い続けた。豪華な葬儀や音楽、侵略戦争、政治制度まで、慣習や権威だけで判断せず、それによって人民の生活に何が起こるのかを具体的に考えてゆく。その思想は、儒家とは異なる方向から古代中国の社会と政治を捉えた、きわめて実践的なものであった。
墨家の世界は「兼愛」と「非攻」だけでは終わらない。
『墨子』には、賢者を登用する政治論、社会秩序をめぐる議論、天と鬼神についての思想、運命論への批判が収められている。さらに後半には、名と言葉、推論、空間、運動、光などを考察した「墨経」が現れ、最後には城壁、弩、地下道、火攻め、水攻めなどを扱う詳細な守城技術へと進んでゆく。
侵略戦争を批判しながら、弱国を守るための軍事技術を徹底して研究する。人を愛することを説きながら、政治の結果を秤にかけるように比較する。天や鬼神を語りながら、経験と証拠によって自説を論証しようとする。
そこには、後世の中国思想の主流となった儒家とは異なる、もう一つの巨大な知的伝統が残されている。
本書は、今日まで伝わる五十三篇をすべて現代語訳し、巻頭には解説を収録。第一部「墨子の生涯」では、史料の少ない墨子の人物像と墨者集団の形成、公輸盤との対決をたどる。第二部「墨子の思想」では、戦国社会の変化や儒家との対立を背景に、墨家的合理性、天と鬼神、非攻と守城思想の関係を広く論じ、第三部「『墨子』という書物」では、その成立、七十一篇から五十三篇への伝承、墨家の衰退、清代以後の再発見と近代的評価を紹介した。
【構成】
解説
・墨子の生涯
・墨子の思想
・『墨子』という書物
凡例
現代語訳『墨子』全五十三篇
親士/修身/所染/法儀/七患/辞過/三弁
尚賢 上・中・下
尚同 上・中・下
兼愛 上・中・下
非攻 上・中・下
節用 上・中
節葬 下
天志 上・中・下
明鬼 下
非楽 上
非命 上・中・下
非儒 下
経上/経下/経説上/経説下/大取/小取
耕柱/貴義/公孟/魯問/公輸
備城門/備高臨/備梯/備水/備突/備穴/備蛾傅
迎敵祠/旗幟/号令/雑守
主要参考文献
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