文学のなかのナポレオン: 作家たちの描き続けた皇帝像

金田智樹 (著) 

一人の人間は、どこまで世界を変えられるのか。

革命の時代に頭角を現し、コルシカ生まれの青年からフランス皇帝へ――。
ナポレオン・ボナパルトの生涯は、「個人の力」が歴史を動かし得るという近代の夢を、かつてない規模で人々に見せた。

そのため彼は、ワーテルローで敗れ、セントヘレナ島で死んだ後も文学の中から消えなかった。

敗れた英雄として。
才能によって身分を越える青年たちの憧れとして。
人々の記憶が作り上げる伝説として。
そして、一人の偉人が本当に歴史を動かすのか、偉大な人間には普通の道徳を踏み越える権利があるのかという問いとして。

十九世紀の文学をたどってゆくと、ナポレオン像は時代とともに姿を変えながら、「偉大な個人」とは何かという近代そのものの問題を映し出している。

『赤と黒』『戦争と平和』『罪と罰』をはじめとする文学作品と同時代の思想を読み解きながら、英雄への憧れが、やがて歴史と倫理をめぐる問いへ変わってゆく過程を追う。

文学から読むナポレオン。
そこから見えてくるのは、一人の皇帝の評判を超えた、近代人自身の夢と危うさである。


【構成】

はじめに

序章 ナポレオンという事件――一人の人間が歴史になる

第一章 バイロン――英雄となったナポレオン

第二章 スタンダール――憧憬となったナポレオン

第三章 バルザック――皇帝から伝説へ

第四章 トルストイ――英雄は本当に歴史を動かすのか

第五章 ドストエフスキー――「ナポレオンになる」とは何か

おわりに ナポレオンという近代人の夢

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