近時政論考: 現代語訳版・解説つき

政党の名に惑わされず、政論の実を見よ――明治の言論人・陸羯南が遺した政治思想史の名著、現代語訳で甦る!
明治近代国家の形成期にあって、藩閥政府にも自由民権派にも安易に与せず、国民はいかに国家を担うべきかを問い続けた新聞人・陸羯南。彼が第一回帝国議会の開設を目前に控えた明治23年に著した『近時政論考』は、維新以来の日本の政論がいかなる道筋をたどってきたかを整理し、明治政治思想史の出発点を示した重要な古典です。
本書は、近代日本が「政治思想」を持とうとしたこの歴史的名著を、今日の読者が通読しやすいよう格調高い現代語に改めたものです。
国権論、富国論、民権論、自由主義、改進論、保守論、国民論――明治前期に現れたさまざまな政論を、単なる政党争いや人物列伝としてではなく、日本人が国家、政府、国民、自由、権利、議会、外交をどのように考えてきたかという思想の流れとして描き出す。そこには、政治の言葉の「名」と「実」を見極めようとする、羯南の鋭い批評精神が刻まれています。
羯南は、国家を藩閥官僚の所有物のように扱う政府を批判しました。しかし同時に、西洋由来の抽象的な権利論をそのまま日本に移植しようとする民権論にも満足しませんでした。彼が求めたのは、政府の専制でも、個人の権利だけを土台にした政治でもなく、歴史と文化を共有する国民が、自ら国家を形成し、責任をもって政治を担う国民的政治でした。
自由、民権、国権、改革、保守、国民――これらの言葉は、今日でも政治の場で繰り返し用いられています。しかし、それを唱える者が本当にその意味を担っているとは限りません。『近時政論考』は、明治の政論を扱った歴史的古典であると同時に、現代の政治言語を見抜くための一冊でもあります。
蜜蜂文庫版では、本文への深い理解を促すため、陸羯南の生涯と人物像、国民主義の思想、新聞『日本』を中心とした言論活動、そして『近時政論考』が明治政治思想史において持つ意義を詳述した「作者・作品解説」を特別収録。政府派でも民権派でもない、明治日本の知的緊張の中から生まれた国民的政論の核心を、自らの目で確かめるための一冊です。
【目次抜粋】
■ 概説
・陸羯南の生涯
・陸羯南の人物像と思想
・『近時政論考』について
・凡例
■ 近時政論考
・序
・例言
・緒論
・第一期の政論
・第二期の政論
・第三期の政論
・第四期の政論
■ 主要参考文献
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