世界の頭脳: 新訳版・解説つき

H・G・ウェルズ (著), 蜜蜂書房編集部 (編集)

・H・G・ウェルズ『World Brain』全篇の新訳
・著者の生涯、思想、本書の歴史的意義を論じる独自解説


『タイム・マシン』『宇宙戦争』の作者が描いた、もう一つの未来像!

世界中の知識を集め、検証し、絶えず更新し、すべての人が利用できるようにする――。

一九三八年、未来小説の巨匠H・G・ウェルズは、大学、学校、図書館、出版機関を世界規模で結び、人類共通の知的基盤となる「世界百科事典」を構想した。

彼が思い描いたのは、書棚に収められた巨大な百科事典だけではない。各分野の専門家が協力して知識を整理し、誤りを訂正し、新しい研究成果を反映し続ける、生きた知識組織であった。それは世界中の人々へ共通の事実と世界像を提供し、教育を刷新し、国家間の分断を越えるための「世界の頭脳」となるはずだった。

電子図書館、学術データベース、検索エンジン、オンライン百科事典、そして人工知能――。今日の情報社会には、ウェルズの構想と重なる仕組みが数多く存在する。

しかし、情報の量が増えれば、人類の判断が自動的に賢明になるとは限らない。誰が知識を選び、誰がその正しさを検証し、誰が誤りを訂正するのか。世界規模の知識基盤を国家や巨大企業が支配したとき、その力をいかに統制するのか。

本書は、未来技術の予言にとどまらず、知識の公共性、教育、世界平和、専門家の責任、情報を管理する権力をめぐる問題を提示する。インターネットと生成AIが社会の基盤となった現在、ウェルズの問いは新たな切実さを帯びている。

本版では、原著全篇を今日の読者が通読しやすい日本語へ新たに訳した。さらに、ウェルズの生涯と思想、本書の成立事情、情報思想史上の意義、インターネットと人工知能への先駆性を論じる解説を収録した。

【構成】

解説 H・G・ウェルズの生涯
・貧困と独学――科学者を志した青年
・科学を物語へ――作家ウェルズの誕生
・小説家から社会改造の構想者へ
・世界大戦と世界国家への道
・破局の時代――政治から知識組織へ

解説 H・G・ウェルズの思想
・進化論と人類の未完成性
・自由、社会主義、知的エリート
・世界国家と知識による統合

解説 『世界の頭脳』について
・講演から一冊の書物へ
・文献運動と新しい複製技術
・『世界の頭脳』の歴史的意義
・インターネットと人工知能への先駆性

『世界の頭脳』本文
・序文
・第一章 世界百科事典
・第二章 現代世界の頭脳組織
・第三章 恒久的世界百科事典の構想
・第四章 世界普遍資料会議における演説より
・第五章 教育における知識内容
・付録第一 動揺する教師たち
・付録第二 パレスチナを相応の尺度で見る
・付録第三 一九三七年、アメリカの秋
・付録第四 大西洋を挟んだ誤解
・付録第五 英語圏世界――「私にはこう見える」

未来を物語った作家は、未来の知識制度まで構想していた。

情報社会の原点を示す、H・G・ウェルズの先駆的古典。

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