武士道: 現代語訳版・解説つき

なぜ武士は、死を恐れず、恥を恐れたのか。
新渡戸稲造が世界に示した、日本人の倫理。
『武士道』は、新渡戸稲造が日本人の道徳と精神を欧米の読者へ説明するため、英語で著した日本思想の名著である。
義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義、克己――。
新渡戸は、武士を単なる戦士として描かなかった。武士道とは、長い歴史の中で武士階級が育ててきた一つの倫理体系であり、危険に直面したときの勇気、他者への仁愛、礼節、言葉への責任、名誉を守る心、主君への忠義、そして何より自らを律する克己の精神によって支えられていると説いた。
その源泉として論じられるのは、仏教、神道、孔孟の教え、王陽明の思想である。さらに新渡戸は、日本の武士道をヨーロッパの騎士道、キリスト教、ギリシア・ローマの古典、シェイクスピア、カーライル、エマソンなどと比較しながら、その特徴を世界的な倫理思想の中に位置づけている。
本書が書かれた明治時代には、武士という身分はすでに消滅していた。それでも新渡戸は、武士道が日本人の礼儀、忍耐、名誉心、忠義、愛国心、教育、家族観などに深く浸透し、近代日本を形づくる精神的な力として生き続けていると考えた。
本版では、一九〇八年刊行の著者改訂増補第十三版を底本として、全十七章を読みやすい現代日本語に訳した。原文の論理、比喩、引用、人物名、歴史的事例をできる限り保持し、原著の脚注も本文との対応が分かる形で収録している。
巻頭には、新渡戸稲造の生涯と人物像、その思想、そして『武士道』の成立と世界的な受容を扱う解説を収録。英語で書かれた『武士道』が、なぜ世界各国で読まれ、日本人自身の「武士道」観にまで大きな影響を与えたのかを理解できるよう構成した。
武士はいかに生き、何を恥じ、何を守ろうとしたのか。
そして、武士の時代が終わった後、その精神はどこへ向かったのか。
日本人の倫理と「強さ」の原型を、新渡戸稲造の言葉から読む。
【本書の構成】
解説
第一部 新渡戸稲造の生涯
第二部 新渡戸稲造の思想
第三部 『武士道』について
凡例
武士道
序文
第十版・改訂版への序文
第一章 武士道――倫理体系として
第二章 武士道の源泉
第三章 義――正義
第四章 勇――敢為と忍耐の精神
第五章 仁――惻隠の情
第六章 礼
第七章 誠
第八章 名誉
第九章 忠義
第十章 武士の教育と訓練
第十一章 克己
第十二章 切腹と仇討ち
第十三章 刀――武士の魂
第十四章 女性の教育と地位
第十五章 武士道の影響
第十六章 武士道は今なお生きているか
第十七章 武士道の将来
主要参考文献
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