武道伝来記・武家義理物語: 現代語訳版・解説つき

武士は、何のために命をかけたのか。
敵討、忠義、義理、一分、衆道、家の存続――。
町人の世界を描いた作家として知られる井原西鶴が、武士たちの生き方へ筆を向けた二つの武家物を一冊に収録。
貞享四年(一六八七)刊の『武道伝来記』は、諸国に伝わる敵討や武士の働きを題材とする全八巻三十二話。親や主君のために敵を追う者、面目を守るために刀を抜く者、長い年月をかけて本望を遂げようとする者。武士が「一分」を守るため、何を選び、何を失ったのかが、次々と具体的な事件として描かれる。
翌貞享五年(一六八八)刊の『武家義理物語』は、全六巻二十七話。主従、親子、夫婦、友、衆道の契り、過去に受けた恩や交わした約束など、人と人との関係から生まれる「義理」が物語を動かしてゆく。約束を守る者、恩に報いる者、家を守る者、敵を前にして相手の心根を認める者。西鶴は、武士の義理を抽象的な徳目として語るのではなく、具体的な選択とその結果によって描き出した。
二作を続けて読むことで、近世の武士を動かした「武道」と「義理」の姿が立体的に見えてくる。勇ましい敵討の背後には長い探索と家族の悲哀があり、立派な義理の背後には、時として生命を差し出すほど重い代価がある。西鶴が描いた武士たちは、遠い英雄ではない。名誉に迷い、情に動き、それでも自らの立場に応じて決断する人間として生きている。
本書では、人物関係、事件の順序、地名、官職、年齢、年月、数量、主従・親族・衆道関係など原文の情報を保ちながら、今日の読者が物語として通読しやすい現代語に改めた。
【構成】
凡例
『武道伝来記』
序
巻一~巻八
全三十二話
『武家義理物語』
序
巻一~巻六
全二十七話
読後解説
「井原西鶴と武士の世界――『武家義理物語』『武道伝来記』を読む」
主要参考文献
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