管子: 現代語訳版・解説つき

国を富ませ、民を養い、天下を動かす。
春秋時代の名宰相・管仲の名に帰され、中国古代の政治思想を集大成した『管子』。
斉桓公を覇者へ導いた管仲の政治的名声を起点として、戦国時代から秦漢期にかけて多くの思想と政策論が蓄積され、やがて八十六篇からなる巨大な書物へと形づくられた。
「倉廩実ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」
『管子』の政治は、まず民の生活を見る。食糧が蓄えられ、衣食が整い、人々が安定して生産を続けることで国家の財政と軍事力も育つ。民生と富国を一つの循環として捉える発想は、全篇を通じて繰り返し現れる。
さらに『管子』は、人間が利益を求め、危険を避け、自らの働きに見合う報いを望むことを政治の前提に置く。法、賞罰、官職、習俗を整えることで人々の行動を導き、君主自身にも節度と正確な判断を求める。「心術」「白心」「内業」では、統治者の心を静め、欲望に左右されない判断を養う思想へ議論が深まる。
後半の「軽重」諸篇では、古代中国でも際立った経済思想が展開される。穀物の備蓄、価格の上下、物資の流通、貨幣、地域ごとの産物を国家が把握し、その動きを利用して財政と民生を調整する。豊作と凶作による価格変動を読み、安い時に買い、高い時に放出する政策まで論じられており、国家が市場をいかに扱うかという問題が二千年以上前から具体的に考察されていたことが分かる。
本書は、前漢の劉向が整理した八十六篇の篇次に従い、現存する七十六篇をすべて現代語訳した。後世に失われた十篇についても本来の位置と篇名を示し、『管子』全体の構成を追える形としている。
巻頭には約九千字の解説を収録。第一部では、貧窮した青年時代から鮑叔牙との友情、公子糾と小白をめぐる政争、斉桓公への仕官、覇業、晩年まで管仲の生涯をたどる。第二部では、春秋・戦国期の国家形成を背景として、『管子』が民生、制度、経済をどのように一つの政治として捉えたかを論じる。第三部では、戦国斉の知的環境、稷下との関係、劉向による整理、後世の受容を通して、『管子』という書物の成立と思想史上の位置を解説した。
国家はいかに富み、人はいかに治まり、市場はいかに動くのか。
中国古代が積み重ねた国家経営の知を、全篇現代語訳で読む一冊。
【構成】
解説
第一部 管仲の生涯
第二部 『管子』の思想
第三部 『管子』について
凡例
『管子』全八十六篇
第一篇「牧民」
第二篇「形勢」
第三篇「權脩」
第四篇「立政」
第五篇「乘馬」
以下、政治・法・軍事・心術・経済をめぐる諸篇を収録
第三十六篇「心術上」
第三十七篇「心術下」
第三十八篇「白心」
第四十九篇「內業」
第七十三篇「國蓄」
第八十篇「輕重甲」
第八十六篇「輕重庚」まで
現存七十六篇全文収録
亡佚十篇の篇次・篇名を併記
主要参考文献
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