葉隠: 現代語訳版・解説つき

「武士道とは、即ち死ぬことである。」
――その一句だけでは見えない、『葉隠』全十一巻の世界。

『葉隠』は、佐賀藩士・山本常朝が晩年に語った言葉を、田代陣基が長年にわたって筆録した武士道古典である。

主君への奉公、死への覚悟、日々の仕事、人との付き合い、意見の仕方、身嗜み、武士の振る舞い、鍋島家歴代の事績、佐賀藩士たちの人物評――。そこに記された内容は、一般に知られる「武士道とは死ぬことと見付けたり」という一句だけには収まらない。

常朝が繰り返し説くのは、危急の時だけ勇ましく振る舞うための精神論ではない。平生から自らの役目に心を定め、主君と御家のために働き、人との応対を整え、迷う時には時宜を考え、いざという時には一身を投げ出せるところまで日常を鍛えることである。

本書は『葉隠』全十一巻を、現代の一般読者が通読できる日本語へ改めた現代語訳版である。原文の論理、断定、反復、主従倫理と武士道の強い語気をできる限り保ち、「奉公」「御家」「被官」「家職」など、当時の思想と生活を支える重要語も残した。

巻頭には、山本常朝の生涯、その思想、『葉隠』の成立と後世における受容を解説する三部構成の解説を収録。著名な一句から離れて全十一巻を読み通すことで、江戸時代の一人の武士が考えた「どう生き、どう仕え、どう死ぬか」という実践の思想が見えてくる。

【本書の構成】

解説

第一部 山本常朝の生涯
・佐賀藩に生まれて
・光茂公への奉公
・主君の死と出家
・隠棲した老武士

第二部 山本常朝の思想
・戦国から太平へ――武士の役割の変化
・「御家」の中で生きる人間
・儒学・仏教と武士の実践
・死を引き受け、生を尽くす
・原則と「時宜」――常朝の実践知

第三部 『葉隠』について
・常朝の語りから十一巻の『葉隠』へ
・佐賀藩の武士たちが書き写した『葉隠』
・近代日本が読み直した「武士道」
・戦後の『葉隠』と三島由紀夫
・十一巻全体から読む『葉隠』

凡例

『葉隠』本文
・聞書第一
・聞書第二
・聞書第三
・聞書第四
・聞書第五
・聞書第六
・聞書第七
・聞書第八
・聞書第九
・聞書第十
・聞書第十一

主要参考文献

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